KIOTOPARISの日記

Wineと日本酒、その他楽しいこと

J.S.A. SAKE DIPLOMA 二次試験対策 (3)

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SAKE DIPLOMAの1次試験お疲れさまでした。

2017年のSAKE DIPLOMAを受験した時に、2次の論述試験対策として自分で作成した問題と解答70問です。

 

1次試験が終わり、猛勉強で燃え尽きた感じの方も多いと思います。私もそうでしたが、2次試験に向けてなかなかモチベーションは続かないもんですね。でも、あと少しですよ。

2017年は最初ということで、どんな論述試験になるのか全く分からなく状態で暗中模索でした。ある人がブログに投稿した内容では、その方がソムリエ協会に電話して直接聞いた情報として、「細かいことは言えないが、テキストの内容の一部を口頭で論じてもらいます」とのこと。

試験案内では「論述」と言ってるのにとこれはオカシイと、私が直接ソムリエ協会にメールで確認しましたら、「個別での回答は差し控えさせて頂きます。Xさんという方がおっしゃっているような内容で回答することは協会としてはいたしておりません」とのことでした。これ以上は言えなかったでしょうが、ソムリエ協会側から迅速に、キッチリとお返事いただいたことには今でも感謝しています。

(2次試験後、その方のブログからは「口頭で」云々は削除され、謝罪とともに内容が変更されてはいました。)

 

2017年の2次試験は「山廃、生酛の現状と将来の展望について」という題で、1問でした。

このような論述試験を予想していた方は極めて少数派でした。

今年も同じような傾向の問題で1問なのか、複数問になるのかわかりませんが、とりあえずこれまで身に着けた知識の整理をしておくのが宜しいかと存じます。

 

「現状」は知識や客観的情報ベースでの回答になりますが、「将来の展望」はどちらかというと、現状を踏まえての個人の考え・考察ですよね。今年も2017年や2018年と同じように日本酒の知識と受験者ご自身の考えが問われるかもしれません。

(個人の考えであれば、余程論理構成が無茶苦茶でなければ減点対象にはならないと考えます。2017年の論述試験は、A4用紙を埋めた場合は、ある程度の(小さくはない)「加点」となり、結果的にはテイスティングで合格ボーダーラインにいる人たちへは「救済措置」になったのかもしれません。そのような書き込みをしていた方もいましたが、これは全く個人的な推測です。2019年は3回目なので、「救済措置」はないかもしれませんね。)

 

細かな知識は1次試験で既にチェックされていますので(2次試験受験者は1次試験に合格していますので)、2次試験対策は大きな視点から日本酒をみるような対応準備がいいのかもしれません

 

また、2017年の試験では1次も含め料理との相性は殆ど出ませんでしたが、2018年は相性や供出温度も出題されたようです。この辺もキッチリと整理されておいた方がいいですね。

 

論述試験の時間は20分ですので、A4用紙を埋めるには結構スピードが要ります。短時間に論旨を頭で組み立て、ドンドン書いていくことが必要ですね。

key wordの漢字練習もお忘れなく

 

2018年は「セルレニン耐性酵母について説明し、あなたの意見を述べなさい」というような題だったようで、2017年と同じような傾向ですね。

 

70問を作ってみました。どうぞご参考になさって下さい。

これ以外にもご自分で課題を作り、その模範解答を用意するのも役立ちます。

受験者同士で課題と解答を交換するのもいいですね。

 

SAKE DIPLOMA 2次試験対策 論述試験向け知識確認

(解答欄のページや内容は2017年のテキストのものです。今年のテキストで内容を再確認ください。)

 

No

  問題

         解答案

 

2016年ソムリエ2次試験論述問題

(ご参考まで)

テイスティング2番のワインをワイン初心者に説明せよ(この年の二次試験の2番はシラーズだったので、その特徴を説明する)

お客さまがワインを冷やして飲みたいと言ってるので料理も併せて何をすすめるか

ひやおろしを説明せよ ⇒「春にできた新酒をひと夏熟成させ、秋に出荷したもの」

1

日本酒の定義を答えよ

(米麹= malted rice)

酒税法による清酒の定義の概要は 

①   米、米麹、水を原料として発酵させ、濾したもの(アルコール分が22度未満のもの)

②   米、米麹、水及び清酒粕その他政令で定める物品を原料として発酵させ、濾したもの((アルコール分が22度未満のもの)

醸造アルコールを用いる場合でも、特定名称酒では重量比で白米の重量の10%を超えてはならない(普通酒では50%を超えてはならない)。

特定名称酒に使用できるのは三等以上の米に限られている。

 

2015年12月に地理的表示「日本酒」が指定され、原料米として国内産米のみを使い、国内で製造された清酒のみが「日本酒」を名乗れる。(p11)

清酒の製法品質表示基準」は1989(平成元)年11月に定められ(特定名称酒等)、2003(平成15)年10月末に一部改正(純米酒精米歩合70%以下の削除、こうじ米の使用割合15%以上の追加)となった。

 

1. 日本酒は、弥生時代から造られていたと推測され、奈良時代には稲作も安定し、朝廷のために造られるようになった伝統的な醸造酒である。

2. 米、米麹、水を原料として、発酵させて、こしたものを『清酒』というが、2015年12月に地理的表示「日本酒」が指定され、原料米として国内産米のみを使い、国内で製造された清酒のみが「日本酒」を名乗れる。

3. 現在多くの日本酒はほぼ透明でクリアな外観に仕上げられている。乳製品の香りと、米と麹に由来する香りがある。酵母由来の果実香、熟成由来の香りなどがある。

4. ワインに比べアルコール度数は高く、糖度は2.5~4.5%と高めで、酸度は低く、白ワインに含まれる量の1/7~1/10の量の有機酸が含まれる。

5. 日本酒を飲む際の最大の特徴が、飲料温度の幅が広い事であり、氷温から燗酒まで60℃以上の差がある。

6. 2013年12月に「和食:日本人の伝統的食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本酒の海外輸出数量も右肩上がりである。(以上401語)

2

杜氏とは何か

日本酒における醸造責任者で、酒造りのトップ技術者。杜氏の下に様々な役割の担当者、蔵人が配置され、酒造りのチームをまとめるチームリーダーである。(p105)

3

吟醸酒とは

 

①    吟醸酒という言葉が文献に出てくるのは1927年(昭和2年)の日本醸造協会誌の鹿又親(かのまた・ちかし)氏の論説「吟醸の経済化について」。(p20)

②    吟醸酒は、吟醸造り専用の優良酵母、精米、原料米の処理、発酵の管理から瓶詰・出荷に至るまでの高度に完成された吟醸造り技術の開発普及により商品化が可能になった。(p12)

③    特定名称酒の分類では、米、米麹、醸造アルコールを原料として、精米歩合が60%以下、麹米使用比率が15%以上で、吟醸造り、固有の香味、色択が良好なもの。(p12)

4

スパークリング日本酒の製造方法

① 活性清酒(醪を荒ごしし濁ったままの酵母入り日本酒)、②瓶内発酵、③タンクで二次発酵させて更に炭酸ガスを吹き込み瓶詰したもの、④通常の日本酒に炭酸ガスを吹き込み瓶詰したもの。(p99)

5

赤米酒(あかまいしゅ)とは

古代米の赤い米を日本酒の原料米の一部に用いて造ったもの。赤い色はアントシアニン。一般の飯米のように「八分づき」にすれば赤い色素を失う。ポリフェノールに苦味があるため、甘口に仕上げているものが多い(p100)苺に合う。

6

貴醸酒とは

(日本酒を加えるタイミングは様々で、多くは)三段仕込みの留添の仕込みの時に、汲水(くみみず)の水を減らし、その分に相当する量の日本酒を添加し発酵させたもの。添加直後の醪のアルコール度数が10%を超えないように、かつ低すぎないようにして仕込む。日本酒度がマイナス40程と、梅酒並みに甘く、酸度は3 ml位でリンゴ酸が多く、さっぱりとした酸味。(p100)、 カッコ部分「新しい日本酒の味わい方」(p228)

7

腐造とはなにか

醪が腐ること。酸敗と同じ。(p16) 「腐造乳酸菌」という菌もある。

酸度が異様に上がり、酵母が増えなくなってアルコールがちゃんと生成されず、「腐造」に追い込まれる。

8

氷温熟成とは何か

酒を熟成させる方法の一つとして、摂氏0~-1℃で熟成させる方法。(p144)

メラノイジンによる変化を抑えたい場合の保存方法。(p156)

9

高精米にした時の特徴

 

(磨く)

①    玄米には7~8%程度タンパク質が含まれており、原料米のタンパク質含有率が高いと吸水率は低下し、蒸米の消化率も悪くなる。またタンパク質が多すぎると製生酒のアミノ酸度が増して、雑味につながりやすく、色や香味が劣化しやすくなる。

②    高精米ではタンパク質を大きく低減させることができる。

③    一般的に高精米程、白米水分が低い。(p54)

④    精米直後の米は摩擦によって水分が失われており、そのまま浸漬すると急速に水分を吸ってべたついた蒸米になりやすい。そのため、「枯らし」にて最低でも2週間ほど袋に入れて保管。(p29)

10

平行複式発酵とは

日本酒の場合、醪の中で、蒸米のでんぷんが麹の酵素によって糖化されるのと同時並行して、酵母によるアルコール発酵が行われる。このような発酵パターンを平行複式発酵という。(p62, 80) Cf. 単式発酵(ワイン)、単行複式発酵(ビール)(p62)

11

醪にアルコール添加する効用

①    醪にアルコールを適量添加すると、香りが高く「すっきりとした味」になる。(p12)

②    酒をシャープにしてくれる(君嶋氏、セミナー)

③    さらに、アルコール添加には、清酒の香味を劣化させる乳酸菌(火落ち菌)の増殖を防止する効果もある(p12, p90) 

④    木の芽、青草、新緑、青竹のgreenの香りは吟醸酒の中でも醸造用アルコールを加えた吟醸酒大吟醸酒に多くみられる。(p134)

⑤    カラッとあがった天ぷらにはアル添があったほうがいい(君嶋氏、セミナー)

12

特定名称酒での麹米使用割合15%の意味

(p89)

2004年に純米酒精米歩合規定(70%以下)が撤廃されたときに、それによる品質低下を防止するとともに、特定名称酒全体について一定の品質を確保するために新たに設けられた要件。根拠としては、

①    国税庁からは15%以上使わないと酵素力価が不足し糖化・発酵がうまくいかないとしている。

②    杜氏の長年の経験から15%以上とすれば、日本酒本来の酒質をもつ、一応満足できる日本酒ができるとしている。

③    鑑評会出品酒の麹米使用割合をみると、最小でも15%であること。

13

YK35とは

Yは山田錦、Kはきょうかい9号酵母。35は精米歩合(p20)1990年代初頭以前の話。

14

竪型精米機とは

これまで「足踏み精米」や水車精米、横型精米機と進化したが、竪型精米機により金剛ロールを回転させ米の外側から削り取る仕組み(p27)

15

一麹、二酛(酒母)、三造り(醪)

麹造りは酒造りの中で最も重要とされている(p52) 良い酒を造るには何よりも麹造りが大事であるが、第二に挙げられた酛(酒母)、つまり大量に培養された酵母の力も酒の出来に大きく影響する。(p94)

16

日本酒醪の乳酸菌に対する防御策

①    土足厳禁、器具やタンクの洗浄・殺菌・乾燥、手洗い慣行による高い衛生意識、

②    比較的低pHの酵母を用いて仕込むため、乳酸菌の増殖を抑えつつ、醪に純粋酵母を大量に添加し、目的以外の微生物を数で圧倒する

③    三段仕込みにて酒母に多く含まれている酵母数、酸、アルコールが一度に薄まらないために、乳酸菌が入り込む隙をなくしている

④    日本酒醪は17℃以下の低温発酵であり、かつスタート時の醪温度は通常10℃以下と低温であり、酵母の増殖は可能であっても、乳酸菌の増殖には不利な温度帯。日本酒の酵母は乳酸菌より低温に強い。(p60, 84)

17

酵母のシェアー

速醸系が90%、山廃酛9%、生酛約1% (p77)

18

酵母とは

自然界の花から分離された酵母で、現在の主流は田中久保(ひさやす)教授が分離したもの。ストレートにその花の香りを生成するものではないようだが、既存酵母にはない特徴の香味を生む可能性がある。(p97)

19

滓引きとは

槽などによる搾りではまだ滓が混在して少しにごりがある。そこで貯蔵タンクなどの中で数日静置すると、滓が沈殿し、上の部分は澄んでくる。滓に触れない口(上呑み)から酒を抽出する作業。(p92)

20

酒米自給自足、移入依存、自給移出タイプの県

①    酒米自給自足タイプの県: 秋田、山形、宮城、新潟。

②    酒米移入依存タイプの府県:福島、石川、京都。

③    酒米自給移出タイプの県: 長野、兵庫、広島。(p127)

21

利猪口の蛇の目の意味

ブルーとホワイトの蛇の目柄は、イエローの反対色であるブルーによってホワイトの部分にイエローがはっきりと写し出される。さらに、ブルーの部分には、白濁の状態が白磁の上よりもはっきりとしており、透明度、清澄度を確認できる。(p130)

22

「冴え」とは何か

伝統的な日本酒の色合いを表現する言葉の一つとして「冴え」がある。もともとの意味は「澄みきること」とあるので、日本酒に対しても、美しく透き通った光沢のある状態を指して表現されている。(p130)

23

「青冴え」

少しグリーンがかった状態である場合に、ポジティブな表現として使われている。

24

「照り」とは何か

もともと光沢があり、艶があることを示す言葉だが、日本酒に対しては、「山吹色に艶がある状態」を示している(p131)

25

「つわり香」とは何か

極端なヨーグルト様な香りで、ネガティヴな香として扱われる(p135) (追加:「ダイアセチル」で発酵バター、ヨーグルト様や甘い匂い)

26

「日光臭」

日本酒が太陽光や紫外線に晒されることによって発生する香り。日本酒は太陽光に非常に弱く、短時間の照射でも不快な香りが発生する。(注:テキストには記載がない)

27

日本酒の保存

①   搾りたての日本酒に感じる甘味と酸味、苦味のバランス上のバラつきは、熟成により調和して滑らかに溶け込む。開封後の酒の保存による変化のリスクはワインに比べ遥かに少ないため、グラス売りが容易。

②   火入れをしていない生酒の保存は、火落ちのリスクを抑えるために氷点貯蔵が理想的。(p156)  (日本酒の氷点は-8~-13℃程。-4℃くらいで貯蔵。高木酒造は-6℃で7万本入るとのこと。)

③   熟成古酒のような熟成を望む場合は、ワインセラーのような14℃くらいで保存。メラノイジンによる変化を抑えたい場合には、氷点に近い低温で保存する。(p156)

28

適温(p144)

①   普通酒本醸造酒純米酒の生酒タイプ:6~8℃、

②   吟醸酒:8~12度

③   普通酒本醸造酒純米酒:15~18℃

④   生酛系純米酒、熟成古酒:18~20℃

⑤   燗であれば45℃前後が旨味や苦味、酸味とのバランスがとれる(40℃前後では苦味の印象がよりマイルド)エチルアルコールの沸点は78.3℃

29

甘辛感に関する日本酒度について

①    日本酒には2.5~4.5%の糖分が含まれている。その測定に日本酒度があり、-の数値が高いほど“甘口”と予測できる。

②    しかし、糖分が同じでもアルコール度数が高くなると比重は軽くなるので、数値的には辛口であってもアルコール刺激による甘味度合いがアップすることを加えると、官能的にはより甘く感じる。

③    さらに酸の量が多いと甘味と相殺しあい、より辛口に感じられる。(p137-138)

30

酸度

(p138)

酸度:1.0以下の場合はより柔らかく軽快な印象。1.5を超えるとよりしっかりしたストラクチャーと余韻のフレッシュ感。コハク酸は旨味や苦味を含みコクを与え、乳酸はふくよかさにも繋がり、リンゴ酸やクエン酸は爽やかさを感じさせる。

31

アミノ酸

アミノ酸度:吟醸酒では1.0~1.3程度。純米酒では1.5前後が多くみられ、低精米酒や熟成古酒では2.0を超えるものもある。(p138)

32

アミノ酸による味わい

日本酒にふくよかさ、濃厚さ、濃熟感、広がり、コクを与える。

33

甘味、酸味、苦味、旨味を口中で感じる各時点とは

①    第一印象(=アタック。日本酒が舌先に触れた瞬間、上顎の前方に意識を移して感じる⇒甘味とボリューム感)

②    広がり(口中前方より後方にかけて広がる味わいの印象、舌全体に意識を集中して旨味を意識する ⇒甘味と酸味のバランス、旨味の印象、甘味に対する酸味と苦味と旨味のバランス)

③    後味(口中後方に残る印象⇒主に苦味と酸味の印象(バランス)、甘味と苦味、酸味のバランスに対する酸味の存在)

④    余韻(特に「ふくみ香」、「もどり香」などと言われるafter flavorの印象や味わいを含めた持続時間などについて表現する) (p139)一部改(「新しい日本酒の味わい方」p37)

34

コクとは何か

日本酒におけるコクは、アルコールのボリュームや残糖分からの甘味と、後半に広がるアミノ酸コハク酸などからの苦味とのバランスから感じられる印象(p139)

35

キレとは何か

後味の余韻がいつまでも残らず、すっと抜けるようなお酒を「キレがある」と表現する。よく「コク」と対にして語られることがあるが、コクは味の変化や種類が豊かでバランスが良いこと、キレはその後の後味についての評価なので、コクもキレもある、という状態も十分ありえる。http://sake-labo.com/a01-05-002.html (August, 2017)

36

楽しみ方へのアドバイス

飲み頃温度、理想の器、相性のいい料理などを加える(p141)

猪口は、液面が狭く、芳香成分を留める空間も狭いことから、香りの印象は穏やかであるため、普通酒本醸造酒純米酒などの燗酒を味わうのに向く。(p148)

37

「もっきり」とは何か

升の中にコップ(グラス)が置かれ、溢れるほどの量を注ぐこと(p149)

38

火落ちとはなにか

アルコールに強い火落ち菌と呼ばれるある乳酸菌 (Lactobacillus属) による変質で、不快な香りを伴う現象 (p156)

39

握り寿司と日本酒

握り寿司は複数のネタの寿司を少量づつ食べることが一般的なので、ネタを変えるごとに酒のタイプを選ぶより、酒のタイプを変えながら合うネタを選ぶ方法がある。例えば、吟醸酒タイプから特別純米酒純米酒、山廃系酒母純米酒、熟成古酒のような順。(p162)

40

椀盛に合わせる酒

椀盛は、汁をソースと見立て、そのタイプに酒を合わせる方法 (p164)

41

ひやおろし」とは

 

 

①    寒造りで醸造され、火入れされて貯蔵した清酒を、その温度と気温差が同じくらいになるその年の秋に(旧暦の9月9日だが、足並みが揃わない)火入れせずに詰めて出荷すること。この時期になると、新酒のあらさすっかり消えて、丸みが出て程良く熟成した飲み頃の酒となる。ほとんどが原酒で、一般的にアルコール度数は高く、濃い。

②    合わせる料理としては、イノシシの味噌漬け焼き、カマンベールのようなクリーミーなチーズ、秋鮭、鍋物

42

秋上がりとは

①    寒造りで製造した清酒を貯蔵して夏を越す。そして秋になる頃にその酒質が向上していること(秋に美味しくなっている状態)を表現した言葉 (p33)雄町の記載 元々は灘の言葉。

②    7号、9号、701号、901号酵母などの伝統酵母を用いて醸した酒には安定感があり、夏を越して香りは低く落ち着いても、味わいがぐっとよくなる状態。(p94)

43

甑倒し(こしきだおし)

「寒造り」も終盤となり、最後の醪(もろみ)の仕込みに使う米を蒸し終えること。蒸米(ふかし)をしていた甑を大釜から外し、それを横に倒して洗うことから、このように呼ばれた。「甑倒し」当日は「蒸米」の無事終了を「酒造の祖神」に感謝し、蔵人によるお祝いが催される。

44

杉玉(すぎだま)

 

酒琳(さかばやし)ともいう。酒蔵なら必ず軒先などに吊るしてある。 古来、造り酒屋の看板として杉の葉を束ねて軒先に吊るし、その年の酒造りと酒造の神(松尾様)のご加護を願う風習があった。これを“酒琳”(さかばやし)と言って、後に球状に造られたことから「杉玉」と言うようになったよう。 青々とした真新しい杉玉が吊るされると新酒が出来た目印となり、月日と共に色が褪せる様は酒の熟成度を表しているかのようでもある。(p16)

45

寒造り(かんづくり)

寒い季節に仕込みをすること。年間の仕込みの中で、冬から春のあいだに仕込むのが、昔から最も良い出来だったことから「寒造り」が酒造の主流となって広まった。

46

斗壜囲い(とびんがこい)

斗瓶取(とびんとり)された雫酒を斗瓶で一定期間保存、滓引き(おりびき)および熟成させること。極端に数が少なく、そのほとんどが鑑評会用出品酒として用いられる貴重な酒。 (注:テキストには記載がない)

47

日本酒の熟成をワインやウィスキーと比較せよ

①    ワインやウィスキーなどでは酸化・還元状態による変化の影響が大きいが、日本酒の熟成はアミノ化合物と糖類の反応によって褐色物質であるメラノイジンを生成するメイラード反応(アミノカルボニル反応の一種)の影響が大きい。

②    この反応は加熱によって急速に進んでいくが(155 ℃をピークに)、低い温度でもゆっくり進む。

③    したがって、精米歩合が高いためにタンパク質やアミノ酸類の多い純米酒の方が大吟醸よりも変化が大きく、低温熟成より常温熟成の方が早く進む。(p24,p156)(「新しい日本酒の味わい方」(p212)

48

日本酒をワイングラスで味わう場合の違い

①    口元が窄(すぼ)んだ形状のグラスは、ワインの場合と同様に液体を注いだ後の空間に芳香成分が溜まりやすく、より強く、よりはっきりと香りを認識できる。

②    グラスの側面が真っ直ぐに近いほど、感じる香りはよりストレートに感じられ、側面のカーブが大きいほど複雑性が増す。(p150) 例えば、吟醸酒をチューリップ型のグラスの底から1/4程度まで注ぐことで、香りがpureでより華やかに感じられる。味わいは、吟醸酒が口元で細くなるが、スピードが速いことにより、第一印象に酸味をより強く感じることになり、爽やかな印象で味わうことになる。

③    熟成古酒にブランディ―グラス。香りをより複雑に、より芳醇に感じるために効果的な形状。苦味をマスキングするために甘味をより強調する場合はアルマニャック用のグラスのような、ややチューリップ型に近い形状のグラスもよい(p152)

49

三浦仙三

明治期の東広島の醸造家で、この地の軟水に合う、低温長期仕込みを開発した。吟醸仕込みの基礎の造り方である。(p105,126)

50

新潟の低迷を宮城と比較せよ

新潟の低迷は純米酒への切り替えが遅れたこと。半面、宮城は純米酒にて落ちていない。(セミナーでの君嶋氏のコメント)

51

日本酒と和食の相性

(p158)

①    リフレッシュさせる(すっきりとした味わいの日本酒が料理の味わいの邪魔にならない)

②    濃い味わいを和らげる(濃口醤油の強い塩味を日本酒の甘さで和らげる)

③    上と逆で、濃い味わいで酒量を上げる

④    料理の味わいを引き立てる

⑤    日本酒は料理の味わいを補う(ワイン同様に料理のソース役)

日本酒で合って、ワインで合わない料理:ワインは青い色の魚や酢でしめたものは合わない。(君嶋氏、セミナー)

52

アル添した(大)吟醸酒の香は?

①    木の芽、青草、新緑、青竹などのグリーンの香り

②    木系の香り、根菜系の香り(p134, p136)

53

生酒にみられる香

①    白桃、マスカット、メロン、ライチなどの果実香

②    花の香り(フレッシュで湿った感じ)

54

熟成酒にみられる香

①    枯葉(紅茶、ブーアール茶、タバコの葉、月桂樹の葉

②    木系の香り、根菜類の香り(人参、ゴボウ、根、朝鮮人参)

③    茸香 ④ スパイスやナッツ系の香り、⑤ ロースト香(カラメル、コーヒー)

55

麹由来の香

①    マッシュルーム、②ナッツ系で栗様の香り、カマンベールの白カビの香り

56

造り方の比較

①    ワインの「畑」に対し、日本酒は「技」

②    日本酒造りはワイン造りよりも酵母への依存度が大きい。(p10)

57

発酵温度

白ワインの発酵温度は15~20℃(12~20℃の説)。赤ワインの発酵温度は25~30℃(25~32℃の説)。日本酒の酵母は8~17℃の低温で増殖・発酵できる(p59)が 焼酎の発酵温度は30℃前後と高い。(p193)

MLFは低温(14~15℃)より中・高温(20~25℃)で早く生起、発酵完結日数も早くなる。

58

仕込み温度

①    速醸系では仕込み温度が18~20℃と比較的高温(蒸米の溶解や糖化が早い)

②    高温糖化酒母:55℃

③    生酛系では品温を5~9℃。(寒酛)

④    山廃酛:9℃前後

⑤    秋田流生酛:14~15℃(生酛系にしては高め)

59

日本酒と焼酎を製造方法から比較せよ(p192)

①    原料:日本酒は米、米麹、水(+清酒粕他)。焼酎(単式蒸留焼酎)麹(米麹、麦麹)、水、酵母で一次醪をつくり、蒸した主原料(大麦、米、芋など)を加える。

②    焼酎では酒母を一次醪と呼び、日本酒醪相当を二次醪という。

③    日本酒では三段仕込みだが、焼酎では麹は一度にすべてを一次麹に入れる。

④    酵母の発酵温度:日本酒では8~17℃。焼酎では発酵温度が30℃前後と高い。

⑤    日本酒では乳酸を必要とするが、焼酎では必要としない。

⑥    日本酒では醪を濾すが、焼酎では蒸留。

 

1. 連続式蒸留器で蒸留されるアルコール36度未満の連続式蒸留焼酎と、単式蒸留器で蒸留されるアルコール度数45度以下の単式蒸留焼酎に分類される。

2. 単式蒸留焼酎はさらに、泡盛芋焼酎黒糖焼酎米焼酎そば焼酎麦焼酎など、主原料等によってそれぞれに分類される。

3. 焼酎の製法は、醪を漉さずに蒸留したもので、焼酎の一次醪が、日本酒の酒母にあたり、二次醪が日本酒の醪にあたる。芋などの主原料は二次醪に入れ、乳酸の代わりにクエン酸を用いる。

4. 焼酎は多種多様な楽しみ方があり、ストレート、ロック、〇〇割りなど、楽しみ方の自由度は高い。

60

酒税法による「こしたもの」とは

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達では、「「こす」とは、その方法のいかんを問わず、酒類の醪を液状部分とかす部分とに分離するすべての行為をいう。」と取り扱われている。(p11)

61

雫搾りとは

醪を搾る(上槽)の方法の一つ。比較的小さなタンクに竹の棒を2,3本渡し、1本に数個づつ、醪を入れた酒袋を吊るす。醪の自重のみで自然落下した日本酒が得られるので、よりきれいな高級酒となる。袋吊りなどとも呼ばれる。(p87)

62

燗酒の理想的な温度

温度の上昇とともに高くなる“甘味度合い”も温度が高ければ甘味度合いも高くなり続けるわけではない。ある温度からエチルアルコールの沸点である78.3℃に近づくほど下がり始め、同時に苦味が強くなる。よりふくよかでまろやかにしながら、旨味や苦味、酸味とのバランスのよさを燗酒の目的とした場合は、45℃前後が理想温度となる。アミノ酸量がより少なく、苦味の印象もよりマイルドであれば、バランス上、温度はもう少し低く40℃前後が理想である。(p145)

63

表示禁止事項

①    清酒の製法、品質等が業界において「最高」、「第一」、「代表」等最上級を意味する用語(note:自社に同一の種別または銘柄の清酒が複数ある場合、品質が優れているものに、「極上」、「優良」、「高級」等つけられる)

②    官公庁ご用達またはこれに類似する用語(note:国、地方公共団体など公的機関から受賞した場合にその清酒に表示できる)

③    特定名称酒以外の清酒について特定名称酒に類似する用語。(p15)

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酒造に適した米の要件

①精米中に砕けにくい ②米粒が大きい ③心白がある ④タンパク質が少ない ⑤軟質米である

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山田錦について

1. 1923年山田穂と短稈渡船を人工交配して作られた酒米。1936年山田錦命名された。千粒重が26 g超と粒が大きく、線状心白で、たんぱく質が少ない。砕米率が低く、高精米に向き、良質な米麹を作る。晩生の軟質米

2. 兵庫県が主要産地で、その特徴は、山間、山麓、盆地で、風通しが良く、気温の日較差が大きい。土壌はモンモリロナイトを主体とする粘土質で、Ca, Mg, Kをバランスよく含み、含有量が多い。山田錦総生産量の7割が兵庫県

3. 全国新酒鑑評会で金賞受賞酒の8割は山田錦と言われ、酒造好適米としての評価が高く、北は宮城県、南は鹿児島県まで、栽培地が広がる。

4. 山田錦を醸すと、絹の様になめらかで、奥行きのある芳醇な味わい。酒のボディがしっかりしていて、和食は勿論、フランス料理などとも合わせやすい。(以上333語)

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日本酒造りが冬場に行われる理由を説明しなさい

1. 江戸期以前は通年で日本酒造りがされていたが、17世紀に灘で寒造りが確立された。これにより酒質の向上、腐造の減少が得られたため、幕府も推奨した。

2. 外気温が低い事により、品温を下げたり、低く保つことが容易になる。例えば、蒸米を製麹に使用する温度まで下げたり、酒母の仕込みにおいて、打瀬~膨れ誘導時期に、品温を低く保ったり、酒母の枯らしでは、品温を7℃に下げたりする。留添えの仕込み温度は吟醸酒では6~7℃と低い。

3. この様に品温を低く保つことは、酵母の増殖のコントロールであったり、有害微生物の排除という目的がある一方で、低温で長期発酵する事により、特有の芳香(吟醸香)を得る目的がある。

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提子(ひさげ)とは何か

酒を注ぐ容器で、急須のように蓋つきの器。銚子に酒を補充するための器であったが、江戸時代になると銚子ともいわれるようになった。

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片口(かたくち)とは何か

椀のような器で、一か所に液体を注ぐための口があるもの。

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五百万石について

1. 1938年に当時の新潟県農事試験場にて菊水x新200号の交配から生み出された。1957年に命名新潟県産米の生産量が500万石を突破し、それを記念したもの。

2. 寒冷地向けの早生品種で、大粒で心白があり、蒸し上げた時に粘らずに(さばけがいい)、外硬内軟の理想的な蒸米に仕上がるため、麹が作りやすい。

3. 米質はやや硬く、溶けにくい。その結果、淡麗で爽やかな酒質になる。。

4. 新潟が生産量の50%弱を占め、富山、福井、石川の北陸地方を中心に2府19県で栽培。

5. 2014年の統計では酒造好適米の25%を占め、2位。22,596トンの生産量。

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従来の日本酒の相性とマリアージュの違いについて、それぞれの実例を用いて説明せよ

①   従来、刺身に合うのは日本酒と思っているのは、「濃い味わいを和らげる(濃口醤油の強い塩味を日本酒の甘味で和らげる)」、「逆に濃い味わいで酒量を上げる(塩辛によって日本酒の味わいをより軽快に感じさせる)」、「リフレッシュさせる(すっきりとした味わいの日本酒が料理の邪魔にならない、魚の臭みをリフレッシュさせる)」。

②   料理の味わいを引き立てる点からのマリアージュでは、「日本酒は料理の味わいを引き立てる(青柚子を添えた初夏の爽やかな料理に青竹のような香りの大吟醸)」、「料理の味わいを補う(フォアグラに蜂蜜ソースを添えるように、熟成さえた貴醸酒を合わせる)」。

 

ここまでお読みいただき、お疲れさまでした。